昨夜、舞台稽古を見ながら感じた喉の違和感が現実となり、家に着く頃には猛烈な痛みと咳に変わっていた。まずいとは思いつつ明日は朝からフル稼働。早めに眠りについたものの、悪夢と喉の痛みとで夜中に目を覚ます。月曜日から合宿する予定なのに頭が回らない。リスケしないと…なんて考えていた。
ふとMARUと二人暮らしをしていたことを思い出す。
「触れたら切れそうなナイフみたい」
仕事とMARUと生活とでいっぱいいっぱいだという話ではない。
完璧主義からはほど遠いのに、やるべきことに「抜け」があると強烈な罪悪感に襲われていた。
出勤前に家事は一通り、洗濯も夜のシッターさんとMARUのゴハン作りと、部屋の整理と、ベッドメイキングと、台所をピカピカにすること、これらをやってからでないと家を出られなかった。実際にはできない日もたくさんあって、そういう日はなんだかとてもまずい気分がして焦っていた。
でもどこか方向が違う気がしていた。
両親と同居し、仕事を早くに終えられるようになり、それは時間をMARUにも生活にも振り向けられるようになったということだが、それは分かった。
物理的に完璧にしているからといってMARUが健やかに幸せに過ごせるわけじゃない。
私自身が笑顔でMARUや他のことを受け止める余裕があって、毎日の小さなことでも幸せだなあと実感できている今のほうがよっぽどMARUも幸せそうに見える。
「しのさんは、やり残すくらいがちょうどいいのよ。」
やり残してばかりよ、私は完璧主義じゃないから、と話したら、
「でも出来なかったことに常に罪悪感を感じるでしょ?しのさんには難しいかもしれないけど、意識的に出来たことでヨシとしてみて。どうすればいいかわからなかったらMARUちゃん見習おうよ。まずは何も考えずにMARUちゃんを真似たらどうかな。出来たことでヨシとして素直に喜んで。出来なかったことの反省は、しのさんはほっといてもするから、まずは目一杯、喜ぼうよ。」
昔、言われた。
鵜呑みにもしないしすぐ出来たわけでもないが、ずっと頭に残っていた。
今、私はどうか?
10年前より、
適度にやり残しながら、
適度に乱しながら。
相変わらず台所はピカピカじゃないと家を出られなかったりするが、それ以外はそんなことない。
台所は好きだからピカピカにする。
出来たら喜ぶ。嬉しい気持ちを楽しむ。
最初はできなくてもムリクリそうする。
その内、出来たら喜ぶ自分がメインになる。出来なかったことを反省する自分はサブになる。
随分、10年前と変わったなあ。
いや、変えたなあ。
少なくとも今は触れたら切れそうなナイフじゃない。
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